Home > 歯科界へのメッセージ > 「コミュニケーションの時代」がきた<2000.7>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
「コミュニケーション力をきたえよう」。最近、こうした呼びかけが目につくようになりました。「かかりつけ歯科医のための新しいコミュニケーション技法」(医歯薬出版)が出版され、注目を集めています。また、文部省が今年3月、患者さんやスタッフとコミュニケーションがとれない医師や歯科医師が増えている問題を重くみて、「臨床家としての全人的教育」を行うためのカリキュラム改革の検討作業に入ったことも記憶に新しいところです。
会員の先生方も、今年4月からの「かかりつけ歯科医」や、訪問診療など、患者さんに診査結果や治療計画を説明する機会が増え、患者さんからの問い合わせや要望も多くなっていることでしょう。。こうした状況に対応するため、本誌でも、昨年から「DrのDrによるDrのための患者さんとの対話術」を連載し、臨床場面に即した実践的コミュニケーション術を展開しています。「コミュニケーション力」が今後の歯科医院経営を飛躍させるカギといえるでしょう。
コミュニケーションの第一の目的は、「情報の伝達」です。皆さんは、実際に自分が話していることが、どれだけ相手に伝わっているとお考えでしょうか。一般的には、伝えたい内容を100%表現すること自体無理なことで、せいぜい6割程度しか表現できないといわれています。そして、(相手にもよりますが)受け取る側も、理解できるのは聞いた内容の半分以下といわれています。つまり、相手に伝わるのは、伝えたい内容のわずか3分の1に過ぎないのです。
情報化時代、患者さんの知識も日に日に高まっています。しかしドクターやスタッフと「対等」に話ができる患者さんは皆無といっても過言ではありません。歯科の情報に大きな格差があり、さらに「ドクター対患者」という立場の違いが、いっそう困難を助長しているのです。歯科医院における「伝達率」は3割をさらに下回っているのです。まずは、ドクターの「表現力」を鍛え、くり返し伝えること、そして媒体(ツール)や環境を整えることが必要です。
歯科医療におけるコミュニケーションには、さらに大きな役割があります。それは単に情報を伝達するだけでなく、相手に変化を与えるというものです。「医療の原点」である相互信頼を築き、円滑な診療を実現し、健康維持・増進のために「行動」するという意思を育むことです。歯科検診を実施して「治療のすすめ」を受けても、受診するのはせいぜい2割程度といわれています。そのギャップを埋めるのがコミュニケーションの力に他なりません。
情報を共有しながら、押し付けにならず、患者さんの考え方や態度に寄り添い、個々の患者さんに口腔保健の「行動」を動機づけていく。それは、言い換えれば、人の思想を変えることです。したがって、一朝一夕にできることではありません。こつこつと、ドクターもスタッフも、何度も話し、ツールを使って説明し、インターネット等あらゆる媒体を活用して、双方向の良好なコミュニケーションを実現すること、それが患者さんの満足感を高め、医院経営を向上させる「王道」なのです。
いま、あたらしいコミュニケーションの時代が到来しています。
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