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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
チャレンジの秋(とき)
●「大変動」の21世紀
世界は2001年9月11日を機に大きく変わりました。「見えない敵」のテロ、それに対する「報復」。さらに、炭疽菌による「バイオテロ」の広がり…。いつわが身に降りかかるかわからない恐怖と「世界はこれからどうなるのか」という暗澹とした空気が全世界を覆い、連動する世界経済も急激に減速しています。日本も、自衛隊派遣にともなう報復テロの危険性とともに、9月10日狂牛病日本上陸の事実が明らかになり、日本経済、社会全体の不安と恐怖に拍車をかけています。
そして、まさに同じ時期に小泉内閣は2002年度に向けて「医療制度改革」の具体化をすすめ、相次いで「中間報告」や「試案」を発表しています。その内容は、すでにご承知のとおり、患者負担増・保険料引き上げ・競争原理の導入・診療報酬引下げ・保険者の規制緩和等、これまでの日本の医療制度を根本から転換させる内容となっています。まさに「医療ビッグバン」の本格始動と言うべき内容です。
●各地から「激しい落ち込み」の声
「『社保本人3割へ』と新聞に出たとたんに患者数が減った」。各地から聞こえる率直な声です。これは多かれ少なかれどの医院にも共通した傾向と思われます。厚生労働省「試案」の、患者側にのみ「痛み」を押し付ける内容が怒りを呼んだとみるべきでしょう。一瞬、4年前の「2割化」の「悪夢」が胸を横切った方もいらっしゃると思います。
もちろん、患者減少の原因は「3割」だけではなく、出口のみえない「平成不況」の深刻化、そして先に述べた社会状況を反映した、不安な「消費者心理」がはたらいていることはあきらかです。ビジョンを示さず「医療費削減」を謳いながら真っ先に患者負担増を断行する、この対症療法的施策は、歯科の受診率低下⇒症状の悪化⇒ズキズキ痛んで受診⇒痛みが治まると中断⇒遂には抜歯、という歯科治療の悪循環の時代に逆戻りさせる以外のなにものでもありません。
●拱手傍観してはいられない
いま歯科界では、歯科医院経営の厳しい現状が様々な数字で表現されています。曰く「現在2万人の歯科医師が過剰で、10年後には4万人が過剰になる」。曰く「1:3:6」即ち生き残り繁栄するのは1割、3割が現状維持、残りの6割は衰退没落の憂き目に遭う、と。その数字が「中抜きの2:8」になる場合もあり、また会員向け機関誌・Together–「経営“術”」の研究会レポートのように「上位1割は順調・中位7割はゆるやかな下降線・下位2割が廃業の危機」という分析もあります。
歯科界に競争原理の波が押し寄せているなかで、ビジネスの世界で言われてきた「勝ち組」「負け組」がそのまま歯科医院の生き残りをかけた戦いを表現する言葉として、現実味を帯びています。むろんこの事態が「他人事」の優良医院もあります。しかし、大多数の先生方にとっては拱手傍観してはいられない「緊急事態」ともいうべき情勢を迎えています。
●「目標」を定め、「迅速に行動」すること
問題は「いま何をなすべきか」。まず院長先生自身と医院の目標、それもできるだけ遠く、20年後・10年後・5年後の姿を描きながら、来年・今年そして今月の目標をたて、その実現に向けて、具体的に行動を開始することです。「目標」は他人から与えられるものではありません。当面する厳しい課題、難問が山積している今こそ、しっかり目標を定め、腰を据えて迅速に取り組んでいきましょう。たとえ「3割」になっても来院してくださる患者さんをいかに増やせるか。そのためには自分の得意分野、特徴を生かして、他院とは違う独自性を発揮しなければなりません。
予防、矯正、審美、パタカラ等々、核になるテーマはたくさんあります。患者さんへのアプローチ、接遇改善は待ったなしです。医院が一丸となって「患者さんの満足」を追求しましょう。先生の夢、目標を実現する今年「21世紀チャレンジの秋(とき)」に期待しています。
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