歯科界へのメッセージ

Message to the dental world

コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

患者さんの権利を守り抜く

一生自分の歯で生活すること

●「国民の立場」からの大転換急務

 この10年の間に、歯科界はまさに最大の「激動の時代」を迎えています。歯科医院数は52,216医院(1990)から64,431医院(2001年11月)に23%も増加し、厚生省の目標値(人口2000人に1医院)を既に5%超過しています。一方1診療所あたりの患者数は24.8人(90年)から17.6人(99年)に減少。国民医療費が20兆6千億から30兆9千億に50%増加しているなかで、歯科の割合は(金額は増えてはいますが)、9.8%から8.1%へと減少し、医療経済実態調査(2001.6)では、前回調査と較べて27万3千円(6.6%)の収入減という数字となっています。
 患者の立場から考えれば、歯科医師も歯科医院も増え、医療費も負担額も上がっているのに、未だに35歳以上の国民の8割以上が歯周病に罹患している実態、国民のDMFTが3.72(12歳児)、「8020」では8007という現実は、(それぞれ以前よりは前進しているとはいえ)より抜本的な改革が急務であることを示しています。

●「最高の歯科医師」を指針に

 この激動期にどのように歯科医院を運営してゆくべきか、誰もが真剣に考え新しい課題に挑戦しています。私たちは、今改めて原点にかえり歯科医療の目的を明確にする必要があります。
 しかし、「不況だ」「厳しい」といっても、歯科全体が落ち込むのではありません。上位2~3割がますます繁栄し、あとの7~8割は淘汰され、消滅してしまうかもしれないという時代なのです。現行の枠組のなかで、今までと同じこと(補綴中心の診療)を続けていては、確実に後者に属することになるでしょう。
 最近、様々な場で紹介される機会が多くなった、Dr.ハロルド・ワースが語っています。「全ての歯は他の臓器と同じく生涯とともにあるのだ」。口はすばらしい、生きている証、「だからこそ、口はどんな犠牲を払おうとも、十分な注意と管理を受けるだけの価値を持っている」と。この詩のなかには、歯科医療の目的が端的に示されています。一生自分の歯で生活することができるよう支援することが歯科医療の役割なのです。
 さらに具体的に歯科医師の役割として示しているのが、130年前、アメリカのドクターが語った「最高の歯科医師」。先月の日本ヘルスケア歯科研究会国際シンポジウムにおいて、熊谷崇・科学顧問が紹介し、参加者に感銘を与えました。最後にそのことばを紹介します。

最高の歯科医師

最高の歯科医師とは、80歳代に達するまで、子どもの場合と同じように、予防によって自己の正常な歯を持てるようにしてあげることができるとの評判を得た人である──
そういえる時代がやってくるであろう。(その時が早くくるように、我々は努力しなければならない)

Dr. John Brockaway