歯科界へのメッセージ

Message to the dental world

コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

明日の医院経営に求められるもの

歯科衛生士の専門性を生かすマネジメント

●アメリカの「歯科医療40年」が示すもの

 この夏「これからの歯科衛生士の役割【ケア・マーケティング】」と銘うったアメリカの口腔ケアビジネスを学ぶセミナーがありました(エキスパデント・ジャパン主催)。講師は歯科衛生士40年の経験を持ち、診療所管理、コミュニケーションのコンサルタントとして活躍するジェニー・トーマス女史。
  –1963年私が初めて勤務した歯科医院では、むし歯で抜歯する患者が毎週30~40人も来ていました。当時、歯科衛生士の仕事は、子ども達に来院を促し、生活習慣を変えてゆくことでした。それが、4年後にその医院を退職する頃には、抜歯は月に1~2件まで減らすことができました。–
 この時期アメリカでは一気に抜歯が激減。口腔衛生への意識が高まり、フッ素の活用と歯科衛生士の活躍によるものでした。歯科衛生士の社会的地位も確立、その役割は、口腔保健の「生涯のパートナー」として高く評価されています。
 40年経過した現在、アメリカの歯科医療は、高齢者の残存歯の増加に伴って、歯周病の管理、メンテナンスへの需要が高まり、経済的にも好況を呈しています。歯科衛生士の働きが医院の大きな収入源になっていることはいうまでもありません。

●「歯科衛生士がいる歯科医院」を選ぶ時代に

 –あなたがたは今、私の若かったころと同じの地点に立っています。–
 ジェニー女史は、講演会に参加した若い歯科衛生士、助手の顔を見ながら語りかけました。日本でも歯科先進国から遅れたとはいえ、民間の臨床医のなかから「治療から予防へ」「カリオロジー・ペリオドントロジー」の重要性が叫ばれ、大きな潮流となり、現在の日本の医療の「パラダイム・シフト」を「草の根」から推進しています。
 いま、生き残りをかけた「歯科医院競争時代」の到来のなかで、歯科衛生士の存在と役割が改めてクローズアップされています。今後、患者が歯科医院を選ぶ際に「歯科衛生士がいる」ことを条件にする時代がくることは確実です。現在、全国の歯科衛生士の数は6万3千人、平均して1診療所にひとりの衛生士がいきわたらない現状(歯科医院数は6万5千)があるなかで、今後歯科医院の間での衛生士獲得競争も起こり得るでしょう。
 「予防へのシフト」とは、ドクターの意識の切り替えとともに、誰がいつ、どのように実践するのか、というプログラムを個々の医院の現実のなかから具体化していかなければなりません。そのうえで、歯科衛生士は不可欠の存在といえるでしょう。

●これからは「チーム医療」総合力の勝負

 当社事務局には「スタッフが定着しない」「スタッフ教育をどうしよう」という相談が多く寄せられています。医院経営の永遠のテーマです。最近「衛生士を戦力化するには」「スタッフを活かす」という類のコピーを目にします。それは、日本の歯科界が全体として、歯科衛生士を、専門知識と技術を身につけた「専門職」「教育者」として位置付けてこなかったことを意味しています。
 これからは「CS」(顧客満足度を高める)の観点からも、ドクター・スタッフ間の業務分担と協力が不可欠です。歯科医療は、ドクターだけで行うものではありません。「治療技術」や「最新設備」ももちろん重要な歯科医院の「魅力」の構成要素に違いありません。
 しかし「予防の時代」を担ってメンテナンスを行い、説明し、生活習慣、口腔衛生をモチベートする、健康のパートナーとしての歯科衛生士の役割を、いま一度認識し、評価しなければなりません。患者さんに対しては同じ立場で、健康作りを支援する仲間なのです。それには、待遇面や専用ユニット等の設備面での充実が必要かもしれません。しかし、それも医院の収入増に直結する投資なのです。
 これからの時代は「チーム医療」です。医院全体の目標設定、個々のメンバーの課題等、チームワーキングの具体化を、みんなの力を合わせてすすめていきましょう。