Home > 歯科界へのメッセージ > 『三方よし』の医院経営<2003.4>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
2003年4月からの「社保本人3割負担」実施を前に、コムネットは3月23日、医院経営の飛躍をめざす第10回「コムネット21世紀セミナー」を開催しました。講師は、コムネット歴12年の東京・葛飾区の「こみや歯科」の古宮秀記・ゆう子両先生と、今『教科書にはない歯科医院経営』で話題の、東京・世田谷区「たねいち歯科医院」事務長(院長の経営パートナー)の上野雅充氏。環境激変の歯科界にあって極めて手堅い経営をすすめている両医院の経営の「ツボ」を講演しました。
いま必要なことは、地域や行政、患者の意識の動向等の社会環境の変化を的確につかみ、医院のビジョンと特色を明確にする戦略的な「意識改革」、「データに基づいた経営のマネジメント」さらに、「スタッフの力を引き出す運営」、「患者さんに向けた情報提供」等の働きかけであり、それらを通じて「地域になくてはならない医院」「オンリーワン」の歯科医院作りをと訴えました。
患者さんの治療を行うためには、口腔状態を正確に診査する必要があります。口腔内写真撮影、DMFT、プラーク、プロービング値、唾液の質と量、飲食回数、フッ素の使用状況、咬合状態、口唇閉鎖力、等々、う蝕や歯周病にとどまらず、口腔内の疾患に対する診査データをもとにしたリスク診断が求められます。そこから、スケーリングや治療、指導やメンテナンスの計画、即ち方針と目標が導き出されるはずです。
医院経営においても、データをもとにしたリスク診断、即ち経営分析が不可欠の課題であることはいうまでもありません。「腕さえ良ければ」式で「経営」を考えない歯科医院は今後存在しえないといっても過言ではありません。こみや歯科は開業以来の診療実績をたんねんにまとめ、上野氏は、実績のなかから導き出した「ユニット台数の限界利益」や「来患者データ」に基づいたわかり易い経営分析の手法を提供。歯科医院競争・淘汰の時代を突破するには、まず自院の原状把握が出発点であることが浮き彫りにされました。
講演のなかで、上野氏は江戸時代から明治にかけて全国を歩いた近江商人の哲学を紹介しました。通常、商売は「売り手よし」「買い手よし」(即ちWIN-WINの関係)で成立します。近江商人は、それに商いを行うその土地の人々の利益を考えて「世間よし」を加えたのです。「売手」「買手」「世間」で「三方よし」、「他国に行商するもの全て我事のみと思はず、其の国一切の人を大切にして私利を貪る事勿れ。」(近江五個荘中村家に残る遺言)この精神が全国で受け入れられ、近江商人たちは成功し、豪商となったのです。
この戒めは、全ての業界に当てはまるものです。自分達の儲けばかりを追い求めることをせず、何よりもお客様の喜ぶ顔を心の糧とし、地域の発展に寄与し得る商売に徹すること。歯科医院と患者さん、地域との関係にも、そのまま当てはまります。4月からの逆風も環境の激変も、「三方よし」の精神と実践で乗り越えられないはずはありません。
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