Home > 歯科界へのメッセージ > 「予防・管理時代」の医院経営<2004.11>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
会員情報誌・Together2004年11月号で紹介している、大阪・吉村歯科医院の開業20周年記念イベントは、歯科医療の今後を考えるうえで大きな示唆に富むものでした。吉村先生は、招待者をメンテナンスに成功している患者さんにしぼり、会の名称を「クライアントの集い」と命名しました。「健康推進の歯科医院として新たなスタートを切る」と宣言し、これからの医院経営の舵取りを明確に「予防・継続管理」に向けて推進してゆく方向性を鮮明にしました。
歯科医院の増加、そして患者数・う蝕の減少、一方では国民の7割以上が歯周疾患に罹患しているという疾病構造の変化、さらには健康保険制度の破綻が危惧される医療経済の動向の中で、個々の歯科医院経営には、いくつもの関門が待ち受けています。
「歯科医師は経営への取り組みが甘い。だから本気で取り組む医院にとってはチャンスである。」と書いている指南本もあります。一般論としてはそれで良いとしても、では、何をどのように「本気で」進めてゆくのか、照準をあわせることが必要で、吉村歯科医院の「宣言」は、まさによく絞り込んだ長期戦略といえるものです。
先ごろ「基本的な歯周治療の実践」をテーマに開催されたヘルスケア歯科研究会第8回シンポジウム。従来のカリオロジーから、視野を歯周疾患(ペリオドントロジー)に広げ「あなたの提供している定期管理は、目の前の患者さんに最適のものですか?」と再検討の課題を提起する内容でした。
プログラムの中で注目されたのは、「歯周病のリスク評価とメインテナンス」をテーマに、3つの医院の抜歯履歴調査のデータが比較検討されたことです。結論からいえば、モデル3医院の患者のなかの5年以上の定期管理患者956人の平均抜歯本数は0.49本。国の調査(歯科疾患実態調査:平成12年)の1.9本の三分の一にとどまっているという好成績を示しました。
今後、国民の残存歯数が増加することは確実で、仮に先進国並みの8015が達成されたとすれば、歯周病対策の需要(治療+継続管理)が飛躍的に増大することは、アメリカの実例が先行して証明しています。
Together2004年11月号のインタビューで紹介している「歯列育形成」の島田朝晴先生の「予防・継続管理」の目的についての言葉は極めて示唆に富んでいます。「予防とは、カリエスフリーを含めた総合的咀嚼器官の完成」であり、「成長に合わせて長期的に管理すること」。納得できます。これこそが、口腔保健の究極の目標に他なりません。「成長」は「ライフサイクル」と置き換えることもできます。「歯科医療」そして「かかりつけ歯科医」の真のあり方をも示しています。
国民のDMFTは徐々に改善されつつありますが、「国民総歯周病時代」を迎えている現在、日本の歯科医療の当面のターゲットが国民病、生活習慣病であるこの歯周疾患であることに異議を唱えるものではありませんが、常に「目の前の患者さんに最適のものか」さらに「本来のあるべき姿」を問い直すことが必要です。「真の標的」とゴールを見定め「予防・継続管理」「健康推進」を旺盛に推進してゆくことを訴えたいと思います。
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