Home > 歯科界へのメッセージ > 「最初の一歩」の重要性──〈患者中心の医療〉実現のために<2005.5>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
日本歯科医師会(以下日歯)は2005年4月15日付「日歯広報」紙上に、3月13日に発足したNPO(特定非営利活動法人)の「歯科医療情報推進機構」(IDI)に対する理事会「確認」を掲載しました。それは、歯科診療所の機能を評価し審査・認定する目的で設立された同機構に対し「設立趣旨、組織形態、事業内容・運営等、どの点からも歯科医療に関する第三者評価機関としては不適当」と全面否定する内容でした。一般紙はその対応を「NPO法人に日歯『不適当』広報紙、異例の批判」と報じ(「日経」4・19夕刊)、歯科界の「不協和音」に強い戸惑いを表明しました。
私たちは先月号でIDIに対する期待を表明しており、今回の日歯理事会「確認」を驚きをもって受け止めました。事はこれからの歯科界の行方に大きく関わる問題だからです。
日歯はIDIの「設立趣旨」について、「医療安全」よりも、歯科医院経営の悪化のなかで「歯科医院の生き残り」を第一目的にあげていると断じています。また「組織形態」もNPOで、社会的な認知度の乏しい「私的な団体」であること。さらに「事業・運営」についても、「医療機関をふるいにかけ」「認定を受けられない診療所が不当な扱いを受け」評価の機会均等が損なわれると非難しています。日歯の今回の分析はおしなべて10年前発足した医科の病院を機能評価する「財団法人日本医療機能評価機構」との比較で行われていることが特徴です。
これらの指摘を読んだ率直な感想は、(極めて残念なことですが)日歯側は恣意的に内容を歪めているということです。この時代誰が医療経済即ち自らの医院経営向上を第一義にできるでしょうか。IDI設立の趣旨が「歯科医療の質の向上と、歯科医療に対する国民(患者)の信頼回復」にあることは明らかなことです。3月にIDIの出発の場に立ち会った者のひとりとして、その姿勢が真摯なものであることを確認したからこそ、私たちは賛同の意思表示をしたのです。
歯科界は、社会を大きく揺るがし指弾を浴びた「1億円不正献金事件」に対して、国民の目に見える謝罪と再発防止の決意、そして歯科界の「再生」に向かう明確な行動をとらなければなりません。「歯科医療情報推進機構」の立ち上げを、私たちはその具体的な行動のひとつとして評価します。IDIはNPOで組織が小さい。しかし、誰かが始めないかぎり、世の中は変わらないのです。私たちは、志を掲げて「最初の一歩」を踏み出した人々を応援したいと思います。
前回の『「第三者機関」が医院を評価する』でも指摘したように、行く手にはまだ多くの課題、改善のテーマがあります。今回の日歯の指摘からも学ぶ点があるでしょう。IDIが4月20日付コメントで「是正すべきは是正します」と冷静に対応していることを評価します。
この機構が社会的に認知され、何よりも国民(患者)の役に立ち、信頼関係を築く力となり、広く医療界・歯科界の良心を糾合する磐石の組織に成長して前進することを念願してやみません。
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