Home > 歯科界へのメッセージ > 「逆風」を「追い風」にする<2006.5>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
「逆風」を「追い風」にする
●過去最高のマイナス改定の先に
「歯科に未来はない。お先真っ暗です」「がんばって定期管理に努力してきたのに…」と、「逆風」に翻弄され、落胆、怒り、困惑の声が渦巻いた診療報酬改定から1ヵ月が経過しました。技術料本体が▲1.5%過去最高のマイナス改定となった今回の改定は、小泉「構造改革」の次の矛先が医療に向けられていることを示すものでした。問題は、その先にあるはずの「歯科の将来像」が見えないこと。それが社会全体に大きな不安を与えています。確実なことは、このまま「改革」が続くなら、医療費抑制(患者負担増)の嵐はさらに激しさを増し、「自己責任」と「競争原理」即ち「金」による「勝ち組」「負け組」の格差が患者にも医院側にもより大きく広がるということです。
●「か初診」廃止と情報提供の課題
今回「かかりつけ初診」274点が廃止され、初診料は従前の180点のみとなり、新たに「歯科疾患総合指導料」130(110)点が設定されました。ヤミ献金や買収という舞台裏の「日歯疑獄」のなかで形骸化した「か初診」は、それでも当初は患者向けの詳しい治療計画書の作成が義務付けられていました。私たちは「歯科コミュニケーション時代の到来」と歓迎し、意気込んでさらに詳しい情報提供をめざす企画を開発しました。しかし日歯が「か初診」に求めたものは「医科との初診料格差を埋める」だけのもので、贈賄工作後に作り変えられた文書は、真剣に「診査内容や治療計画を患者さんに伝えよう」という情熱を感じられないものに変質していました。今回の廃止は、患者の同意を得ないで算定した「か初診」の当然の帰結ともいえるでしょう。
新たに登場した「歯科疾患総合指導料」では、病状の診断や指導計画、説明資料の添付とともに、患者の自署による署名や受領年月日記入という詳しい説明義務が課せられています。その他にも、合計14種類に及ぶ情報提供文書や、明細を明記した領収書の発行という、患者さんが自分の口腔内の状態、治療の内容や期間、治療費用の明細を自分で確認できる条件を制度的に整える改定が行われました。
●改定を「追い風」にする経営戦略を
現場からは「手書きで腱鞘炎になりそう」「要件がきびしいので算定しない」等、事務の煩雑さに対する嘆きや諦めが聞こえてきます。確かに、新しい提供文書の要件や様式は細かく定められ、まずはそのハードルをクリアすることが第一課題です。しかし、それを診療報酬の「〇〇料」を算定するための単なる形式にしてしまってはなりません。
私たちにはさらに大きなチャレンジが求められています。この制度を、患者さんへの情報提供を強め情報を共有する新たな医院経営の戦略として位置づけることが必要です。
通り一遍の文書ではなく、個々の患者さんの状態や生活環境、個性や考え方に配慮した対応、情報を共有して、ともに健康と幸せな生活のためにがんばっていこうという励まし。今回の「改定」を、患者さんとのより深い信頼関係を構築する大きな契機ととらえ、前向きに、攻勢的にとらえていきましょう。工夫の可能性は無限です。これまで私たちが開発し、蓄積してきたデンタルサポート企画は、今回の改定を「逆手」にとり、「追い風」にして医院経営を飛躍させる力を発揮すると確信しています。
いま必要なことは、歯科医療にとりくむ軸となる「医療哲学」を明確にすることです。困難にみえる「壁」の中にも、必ず歯科医療を飛躍させる「種」が含まれているからです。
国民の健康と幸せにとって必要な課題を見据え、そしてそれに貢献する医院の方針を鮮明にして日々の診療を組み立て、実践してゆく「経営戦略」をたてていきましょう。その決意と粘り強い努力の延長線上にこそ、日本の歯科医療の希望に満ちた未来があるのです。
がんばりましょう。
COMNETDentalsupport