Home > 歯科界へのメッセージ > 8010時代に向かって──口腔領域需要拡大の行動を!<2006.7>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
8010時代に向かって
口腔領域需要拡大の行動を!
●8020達成者8.1%増
厚生労働省から「平成17年歯科疾患実態調査結果」(概要)が発表され、80歳以上で20本以上自分の歯を保有する「8020達成者」の割合が、6年前(1999年)の前回調査と比べて8.1%増と大幅な伸びを示し21.1%にのぼりました。
これは2000年に厚生省(当時)が健康増進の運動「健康日本21」で掲げた「10年間で8020の割合を20%以上にする」という目標を5年間で達成したことになり、画期的なことです。
●「8009.765」に前進
年齢と保有歯数の関係では、10代と60代前半の歯数が減少しているものの全体の保有歯数は増加しています。なかでも75~79歳では10.66本(前回比+0.6本)、80~84歳が8.87本(前回比+0.02本)と増えており、80歳の推定保有歯数は9.765本即ち〈8009.765〉となり、ほぼ「8010」に近い本数に到達していることがわかりました。「8020運動」が1989年にスタートして17年、国民の保有歯数は着実に前進しています。
●生活習慣病が減らない
しかし、前回でも指摘したように、「健康日本21」に取り組んだにもかかわらず、期間半ばの現在、肥満も飲酒量も増え、生活習慣病も増加するという厳しい現実が続いています。国民の死亡原因の6割が生活習慣病で、31兆円の国民医療費の3割がその治療に充てられています。
「8020達成者の医療費は非達成者よりも20%も少ない」という兵庫県歯科医師会の調査が示すように、達成者の増加が今後、健康増進と医療費削減に好影響を与えることを期待したいと思います。
●歯科需要が減少する?
8020人口の増加や2大疾患(むし歯・歯周病)の減少、少子化の進行によって、歯科医療の需要そのものが減少するのではないか、と危惧する声も聞かれます。確かに「歯科医業の目的は歯の欠損部を補うために人工物による補綴で咬合咀嚼を回復させること」とする理念の下に構築されている現在の制度のもとでの「需要」は減少するでしょう。
予防先進国オランダでは、年1回の予防処置や指導や18歳以下の保存治療も公的保険でカバーされる制度のもとで(それ以外の治療は自費)、従来型の治療中心の歯科需要は激減したといわれています。
●アメリカ予防歯科の教訓
ところが、かつてアメリカでは60年代から90年代の30年間で、フッ素水道化などの予防努力の結果、DMFTが6割減少しましたが、同時に「口腔診査」「予防処置」「歯周治療」の需要が65%も増加し、歯科医院が空前の好況を呈したという例があります。疾患の減少と保有歯数の増加を悲観する必要はありません。「健康増進」への取り組みが歯科の新たな需要を喚起することは明らかだからです。
●口腔領域拡大の可能性
「8010時代」の到来は、保有する歯を守る治療やメンテナンス、「抗加齢医療」や「笑顔」「美と健康」へのアプローチ等、口腔から全身の健康へ、そして豊かな暮らしと「ハッピーライフ」を実現する最も大切な器官としての口腔の役割を十二分に発揮させる可能性にあふれています。なかでも生命に直結する「呼吸管理」へのアプローチは今後歯科の重要なテーマとして浮上するでしょう。
需要拡大のためにやれることは山ほどあります。いま大事なことは、旧い殻を破り、自信をもって歯科領域を拡大する行動に出ることです。ドクターの「はじめの一歩」を期待します。コムネットが全力で応援します。
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