歯科界へのメッセージ

Message to the dental world

コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

心のこもった情報発信を!

●飯舘村菅野村長の言葉

東日本大震災の後、ずっと、忘れられないことばがある。福島県飯舘村の菅野典夫村長が繰り返し語った「もっと、心のこもった、相手の立場に立った情報の公開を望む」という、静かだが、憤りに満ちたことばである。

3月25日、枝野官房長官は、福島原発から半径20-30キロ圏内の住民に対して「自主的避難」を要請した。それをうけて、30キロ圏内の飯舘村の菅野典夫村長が、27日NHKで「もっと心のこもった情報を」と語った。肝心な情報は、現地の住民、自治体には何も知らされず、いきなり「避難してほしい」では何もわからない。住民たちは、テレビを見て避難要請が出たことを知る。

それで今日までの暮らし、家や田畑を捨て、大切に育てた家畜や犬を残して出て行けという。そんなことがあっていいのか。「心のこもった情報を」と求める菅野村長のことばには、政治のあり方、電力会社の姿勢、情報を扱うマスコミ、それらの人間に対する姿勢すべてに対する厳しい批判がこめられている。

●2ヵ月後の炉心溶融発表

東日本大震災から2ヵ月後の5月12日、東京電力は、福島第一原子力発電所1号機で3月12日に原子炉内の核燃料の大半が溶融し、圧力容器の底を破壊して、メルトダウン(炉心溶融)の状態にあったことを認めた。それまで、東電も官房長官も「燃料の一部損傷」「原子炉格納容器の堅牢性は確保されている」と、あいまいな表現に終始していた。しかしそれは、故意に情報を隠し事態を軽くみせて国民の非難をかわそうとしていたとしか思えない。単なる「分析の甘さ」や「事故の過小評価」ではなく、戦前の「大本営発表」の虚偽の宣伝を想起させるに十分な欺瞞であった。

そして、1号機に続いて2号機、3号機でもメルトダウンが起きていたことが明らかになった。いま、福島原発は「メルトダウン」から「メルトスルー」へと崩壊の道を進んでいると思われる。民主党も自民党も政争にあけくれる時間があるなら、被災地、国民に向かってただちに真実と希望に満ちた情報・メッセージを送ることに専念すべきである。

●思いやりのある情報を!

コムネットはいま、全国の歯科医院に向かって「思いやりのある情報を届けよう。」と訴えている。飯舘村の菅野村長のことばに心を動かされ、共鳴してこのタイトルをつけた。

東日本大震災で、誤嚥性肺炎から命を守り、噛んで食べることで生きる希望を与える歯科の役割がかつてなく注目を集め、また検視に尽力する使命感に燃える歯科医師の奮闘が感動を呼び、連日新聞紙上にとりあげられている。

かつて、医療界でも病院による医療事故隠しやカルテの改ざんといった患者の尊厳を足蹴にする情報操作が行われ、国民の厳しい批判を受けたことがある。今こそ、地域に向かって、予防や口腔ケアの大切さを訴えよう。口腔内や治療の正確な情報を患者さんと共有して、健康増進と笑顔のために、ともに手を携えて進んでゆく歯科の価値と心意気を社会に示すときである。患者さん本位の「思いやりのある情報」をしっかり届けていこう!
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