歯科界へのメッセージ

Message to the dental world

コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

『3・11』を前に

●2011年3月11日14時46分

昨年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく1年、死者不明者2万人近く、壊滅的な被害を受けた沿岸部では、今なおガレキが積み上げられ、復興の青写真もできていない、あるいは福島原発の放射能拡散によって、故郷を失った人々が多く存在するという厳しい春を迎えています。歯科医師会のまとめによると、東北3県で12人の歯科医師が亡くなり、全壊した診療所が119、半壊、損壊をあわせると、約1000の歯科医院に被害が及びました。
ここに、あらためて亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。そして、復旧・復興に向けて日夜尽力されている皆様方に対して、私たちも連帯と支援の思いを新たにしたいと思います。

●「歯科医療」の原点に返って

本欄でも紹介していますが、東日本大震災のなかで、連日献身的に検案・検視に奮闘する歯科医師の活動や、避難したお年寄りを誤嚥性肺炎から守る口腔ケアに尽力する歯科衛生士の姿、また、口から食べることで命を守り、生きる力と意欲を育む歯科医療の「底力」が注目されました。なかでも、診療所を流され、一時は安否さえもわからなかった歯科医師、歯科衛生士が、自ら避難生活を送りながら避難所を回って、口腔ケアに力を尽くす姿は、強い自覚と責任感を持つプロの『医療人』として感動を呼びました。そのひとり、釜石市のおいかわ歯科医院及川陽次院長(49)は仮設の診療所を開設して半年、市の復興計画がまだ決まらないなかで、「待っている患者さん、来てくれる患者さんがいるから」の思いを胸に、歯科衛生士と二人で来院者の診療と訪問診療にねばり強く取り組んでいます。被災地で地道に診療を続けておられる皆さんの1日も早い復興をお祈りします。

●歯科を「クローズアップ」

年が明けて、1月のマスコミは歯科に焦点を当てていくつもの特集を組んでいます。NHKは「クローズアップ現代」や「あさイチ」で、国民生活センターへの相談データをもとに、多発するインプラント事故をめぐる厳しい歯科事情を報道し、大きな反響を呼んでいます。
また2月9日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)では、年間患者数80万人、全国25ヵ所、海外でも9ヵ所を展開する医療法人「徳真会」をとりあげ、診療の様子や医院運営、また、理事長の松村博史氏を紹介しています。1981年、28歳で新潟に開業。当時の、医療者側の視点が強い業界の古い体質に違和感を覚えDOS(DoctorOrientedSystem)に対して、POS(PatientOrientedSystem)を掲げて患者視点・スタッフ視点・社会国家の視点から正攻法で「世界一の歯科グループをめざす」と志を立てて、いまや日本最大の歯科グループに成長しています。彼は雑誌「ZAITEN」3月号の特集のなかで、歯科医療の衰退から脱却するには大競争時代を生きぬき、歯科医師一人ひとりが切磋琢磨することの必要性を強調しています。

●努力し変化・成長し続ける

私たちは、歯科界の現状を厳しくみる必要があります。しかし、やみくもに嘆いたり、うろたえたりする必要はありません。また、「歯科なんてもうだめだよ」と傍観者になるのはもってのほかです。日本国内には、国民の半数以上(55%)が「歯や口腔に異常を感じている」のに治療を受けている人が2割にも満たない(16.2%)現実があり、8割以上の人が「未治療」のまま生活しているのです(日歯「歯科医療に関する一般生活意識調査」2011年)。その国民、地域のみなさんに、歯科医院に来てもらう努力、予防とメインテナンスの大切さを知ってもらう努力、インプラントも安全、安心、確かな技術で診療していることを知ってもらうアプローチを行うなら、事態は必ず変わるはずです。ポイントは、地域の人々の健康と笑顔のために患者さんに寄り添い、心からのメッセージを送ること。大震災で発揮した「医療人」の自覚と誇りを胸に患者さんに向かっていくことです。
私たちコムネットは、25年間培ってきた情報ネットワーク、そして日々現場から学び、蓄積し続けている情報を基に、患者さん目線で「明日の歯科医療」をめざして、歯科医院と患者さんとのコミュニケーションを包括的にサポートするサービスを行ってきました。院長の理想、そして患者さんの笑顔という目的地に到達するための戦略や戦術、手段は変幻自在、多種多様です。ともに挑み、変わり、成長しつづけて参りましょう。