Home > 歯科界へのメッセージ > 「歯科のしごと」は何か<2013.03>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
「歯科のしごと」は何か
●口腔保健推進に9千万円
来年度の予算案が発表され、厚生労働省予算は29兆4千億円で今年度比10.3%増。歯科関連では、民主党政権下で一昨年成立した「歯科口腔保健法」を推進する9千2百万を計上しているのが特筆されます。内容は、地域における口腔保健事業の体制確保、歯科医療サービスの提供が困難な障害者への対応、医科歯科連携の模索など、政策的な支援が待ち望まれていた分野へのアプローチが(やっと)開始され、新たな歯科の活躍の分野を開拓する (言い換えれば歯科の「市場」となる)予算案と読み取ることができます。それだけに、いま「歯科」の分野が担うべき役割(しごと)は何かを再度共通認識とするとともに、その役割に応える態勢を整えることが求められています。
●歯科のしごと (1)命を守る
東日本大震災からもうすぐ2年。三回目の3.11を迎えます。亡くなられた方々の3回忌にあたり、あらためてご冥福をお祈りするとともに、復興が一日も早く軌道に乗ることを祈念いたします。
この大震災で私たちは、歯科が犠牲者の検視や身元確認に決定的な役割を果たすと同時に、九死に一生を得て難を逃れた被災者を誤嚥性肺炎などの「震災関連死」から救うために歯科の支援、口腔ケアが極めて大きな役割を果たしたことを胸に刻みました。その教訓を受け継ぎ、日々の診療においても「命を守り、見守る歯科医療」を実践していきましょう。
●歯科のしごと (2)歯を守る
アメリカは70年代にフッ素による予防歯科に取り組み、DMF数値を20年間で59%も減少させています(17歳・1973年16.9本→1994年7.0本)。当然う蝕治療は激減し(充填・クラウン・抜歯が23.6%減少)、逆に定期検診・予防処置・歯周治療が65%も増加。その結果、歯科界は「かつてない活況」の時代を迎えたのです。保有歯の多い高齢者が増え、歯周治療やメンテナンス需要が増大し全米4千5百人のペリオ専門医では対応しきれないほど。「歯を守る」ことが歯科の市場を広げると同時に医療費全体の削減にもつながることを、声を大にして啓発すべきだと考えます。
●歯科のしごと (3)健康づくり
歯科医療は、口腔内の硬組織と軟組織の両方を診るしごとですが、さらに、口唇や咽喉をも視野に入れることで、呼吸、睡眠、摂食嚥下、構音から脳血流、副交感神経から表情筋まで、全身の健康、クオリティオブライフ(QOL)の向上に直結する役割を果たすことができます。また、咬合と姿勢の改善によって(心の問題まで含めた)さまざまな問題の改善につながる症例も数多く報告されています。内科的にも発熱や肺炎はもとより心疾患、脳血管障害、糖尿病とのかかわり、全身の健康と密接不可分の関係にあることが明らかにされており、昨年保険導入された周術期口腔管理なども含めて、医科・歯科連携の時代に歯科からの積極的なアプローチを望む声が高まっています。
●歯科のしごと (4)希望を育む
「歯科のしごと」にはもちろん虫歯や歯周病の治療をして「咀嚼と笑顔をとり戻す」という大切な役割がありますが、本来それは予防できる疾患であり、私たちは「その先」にある「美と健康」の増進をめざして力を尽くしていきましょう。むろん医療制度、保険制度の根本改革が不可欠です。歯科が元気で明るい日本を創る力と可能性に満ちていること、もっといえば「噛むこと」自体が人間の元気、生きる意欲を育んでいる。すなわち「希望を育む」すばらしいしごとに携わっていることに自信と誇りをもって前進していきましょう。
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