Home > 歯科界へのメッセージ > 「口腔を生涯守る」心意気<2014.11>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
「口腔を生涯守る」心意気
第7回日本国際歯科大会
10月中旬、4年に1度開かれる国際歯科大会「第7回日本国際歯科大会」が開催されました。全体を俯瞰すると、主催者(クインテッセンス出版)が掲げるテーマ「欠損主体の時代から“口腔を生涯守る時代”」という、超高齢化時代に向かって日本の歯科医療が直面している中心課題に真摯に向き合う姿勢が随所に顕れていました。
海外からの56人を含む総勢432人の演者による講演は、歯周治療、インプラントなど焦眉の最前線治療とともに「生涯を見据えた補綴設計」 「オールステージ対応の歯科医療」 「超高齢社会の歯科技工」など、人生90年時代に対応して「時間軸で歯・口腔機能を育てる・守る・看取る」という人の「人生」に向き合い「口腔を生涯守る」心意気が感じられる大会でした。同時開催のデンタルショーでもCAD/CAMなどと並んで、医科歯科連携や訪問診療を支援する器具、システム、出版物が次々に開発されている展示が強く印象に残りました。
5年がかりで3万人追跡調査
9月25日「8020推進財団」は歯科医療と全身の健康に関する大掛かりな疫学調査を行うと発表。10月27日以降の1週間に全国1410の歯科医療機関に来院した初診・再初診患者3万人を対象に、5年をかけて「歯科医療による健康増進効果を調査する」大規模なプロジェクトです。
「残存歯の多い人ほど寿命が長い」 「8020達成者は非達成者に比べて医療費が2割少ない」 「口腔のQOLの低い人の死亡率は高い人の1.26~1.43倍にのぼる」等、これまでも「口腔の健康」が「健康長寿」に寄与する様々な報告がなされてきました。今回全国的な規模で検証する意義は極めて大きいものがあり、5年後の結果を期待したいと思います。
「老いにどのようにかかわるか?」
10月7日「第66回保健文化賞」の贈呈式が行われました。今回POIC研究会会長の米山武義氏が受賞したことは日本のみならず世界の歯科医療にとって画期的な出来事です。
米山氏は、それまで放置され歯科が見放していた「通院できなくなった」高齢者に対する口腔ケアによって、発熱や肺炎を半減させるとともに、それをLancet(1999年)に発表して一躍国際的な評価を勝ち取りました。その業績が「日本の医療を変える」切り札としていま再び脚光を浴びているのです。
「時の人」米山氏は、今月神戸で開かれる日本ヘルスケア歯科学会において「超高齢社会における老年歯周病学・歯周治療の夜明け」と題して基調講演を行います。「健康を守り育てる」予防歯科を積極的に推進してきた同学会が正面から「老い」に向き合い、高齢者や通院できなくなった人に対する定期的な健康管理や訪問診療をメインテーマに学会を開催するのは初めてのことです。
「歯科の夜明け」を引き寄せよう!
「口腔の健康」を生涯守ること、それには1人の人間がこの世に生まれてから終末を迎えるまでの85年、90年の時間軸(タテ糸)で患者さんに向き合うこと、そしてその人を取り巻く社会環境や生活、なかでも医科・歯科・介護・福祉(ヨコ糸)との協力・連携が不可欠です。
歯科の役割(価値)が見直され、検証され、実際に持てる力を発揮することが期待されている今こそ、歯科界が「口腔の健康を生涯守る」心意気と行動力を見せる最高の時と言えるのではないでしょうか。「歯科の夜明け」はまさにこれから、総がかりで夜明けを引き寄せていきましょう。
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