歯科界へのメッセージ

Message to the dental world

コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

「人柄」と「技術」で選ばれる

6割以上「かかりつけがいる」が…

11月8日の「いい歯の日」を前に発表された、日本私立歯科大学協会による一般市民1000人を対象に行われた意識調査によると、3人に2人(64.3%)が「かかりつけ歯科医院がある」と回答し、前回(2012年)と比べて2.8%増加したと報告されています。6割以上という数字は、4年前の前回も61.5%で6割以上でしたが、かなり高い数値です。

ところが「通院経験」をみると、現在から半年前までの間に通院している人が44%と4割以上いますが、逆に、通ったのが「5年以上前」から「歯科医院に通ったことがない」人も、合わせて5人に1人(20.5%)いることがわかりました。通ったのが「2~3年前」と「4~5年前」も合わせて23.3%います。この数字から、およそ半分の人が「痛くなってから行く」もしくはトラブルがあっても受診しないという行動パターンの現実が見えてきます。

選ぶ基準が「近さ」でなくなった

興味深いのは「かかりつけ」を選ぶ基準です。これまで「歯科医院を選ぶ理由」でダントツだったのは「家や職場から近いから」「通うのに便利だから」という理由でした。以前コムネットが行った「118アンケート」でも他の世論調査でも1位は「近いから」でした。私立歯大協の調査でも前回の調査の選定基準は「立地」が65%でトップでした。ところが今回は46.4%で3位に後退し、1位に躍り出たのは「人柄」だったのです(10.3ポイントアップの50.5%)。2位は「技術」で46.7%でした。

これは歯科医院に求められているものが変化していることを示しています。「近さ」「便利さ」を最優先に選んでいたコンビニ型の患者さんが、「人柄」歯科医院のサービス・品質で歯科医院を選ぶ時代に変わっていることを示しています。第2位に「技術」がランクされていることも同じ変化と言えます。「人柄」と「技術」で選ばれることが医院経営の条件になっているのです。

理想の歯科医療は「丁寧な治療」

 「理想の歯科医師は?」と聞かれてどう答えるでしょうか? 治療を受ける側からすると、「腕」の良し悪しとともに予防・メンテナンスの取り組みが気になるところですが、今回の調査の結果は「丁寧な治療をしてくれる」がトップで71.8%、2番目が「高い技術」(68.7%)、そして「人柄が良い・優しい」(67.7%)、「治療の説明をきちんとしてくれる」(64.4%)と続きます。それは総合的な意味で歯科医療に対して患者さんは人間性を求めていることを表しています。それは「選ぶ基準」の「人柄」と重なります。

すべては「コミュニケーション」から

以前、経済雑誌「週刊ダイヤモンド」(2013/6/15付)が「もうダマされない!歯医者の裏側」を特集して反響を呼びました。そのなかに「危ない歯医者・医療機関を見分ける7カ条」が掲載されています。
その「7カ条」は ①患者の話を聞こうとしない ②治療の欠点や危険性を説明しない ③治療計画を説明しない ④自由診療を強引に勧める ⑤保険診療以外の治療を完全否定する ⑥セカンドオピニオンを嫌がる ⑦院内に清潔感がなく、器具を使い回す というもの。7カ条のうち実に6つまでが説明やコミュニケーションで解決できる問題なのです。
「人間性」「人柄」とはイコール「信頼関係」をいかに構築するかということです。信頼関係は、相手を知り自分を知ってもらうことから始まります。「コミュニケーション」は接遇や応対ばかりでなく、医院の外観からバリアフリーなどの院内の造り、診療システムや説明ツールまで多岐にわたります。「選ばれる歯科医院」づくりはすべてコミュニケーションが出発点でありゴールなのです。