歯科界へのメッセージ

Message to the dental world

コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

歯科医院は足りない!!

「それってホントの話!?」

前回のTriangleで「歯科医院はまだまだ不足している」と書いたところ、「歯科の将来に希望が持てる内容だった」という評価とともに「それってホント?」「とても実感できない」という疑問やご質問をいただきました。それだけ「需給問題」は医療現場で喫緊の最も大きな関心事であることを物語っています。
2月9日、保団連(全国保険医団体連合会)は開業歯科医の21.1%が「医院経営の見通しがたたない」と答えている調査結果を発表しました。また、他の調査で東京都の歯科医院の格差が大きくなり、全体の24.5%が「レセプト100枚以下」、25.7%が「年間所得500万円以下」という経営環境の厳しさを物語る数字も明らかになっています。

「過剰」「不足」情報錯綜!

昨年11月、厚労省の「歯科医師の資質向上に関する検討会」のWG(ワーキンググループ)で、来院数を1日14.1人(訪問診療除く)として、歯科医師の増減の予測を総合して2041年には需要10万1400人に対し供給が9万5900人で推計5500人が不足するという発表があり注目されました。WGでは、「過剰!」「不足!」の激論が交わされたといいます。
また厚労省も昨年12月、国家試験の合格者数の予測や患者数から同様の推計を行い、2017年で最大1万1300人、2029年には同じく1万8100人が過剰になると発表しました。それに基づいて歯学部定員の削減や国試の合格基準の引き上げを検討すると報じられています。しかしどちらも机上の推論の域を脱していません。

「補綴中心」医療の破綻!

問題は旧態依然の発想にあります。確かに少子化とむし歯の減少に対して歯科医師が増え続けている側面からみれば治療中心の歯科医師は「過剰」です。
それは25年前から言われていました。1992年に発表された、野村総研による「わが国における歯科診療報酬体系の基本的あり方に関する研究」は「歯の保存、補綴中心の医療では、将来10万人を超える歯科医師の経営を支えることはできにくい」と警告しました。「歯科医院の収支は2010年には現在の40%に落ち込むおそれがある」と。実際には当時1800万円だった「損益差額」は2014年で1158万円、64%まで減少しています。
しかし日本の医療政策=診療報酬体系は依然として補綴・治療中心で推移しています。時代は変わり、疾病構造も国民の歯科のニーズも大きく変化しています。早急に予防・定期管理中心型に転換しなければなりません。

アメリカの歯科活況の源流

アメリカでは今年も歯科医師が「Best Job 100」の上位にランクされ、3位に口腔外科医(平均年収2千万)、5位に歯科矯正医(同)、9位に一般歯科医(1千7百万)が並んでいます。そのベースになっているのは、1970年代に展開された予防歯科にあります。フッ素を活用した予防の推進で劇的にむし歯が減少し、その後多くの歯を保持した国民の歯を守るメンテナンスの需要が増加し、「美と健康」にシフトした歯科界は空前の活況を迎えたのです。

「自覚症状」だけでも3倍必要

現在、1日あたりの歯科受診者は136万人。この人は口腔にトラブルを抱えた生活者の29.7%です(日歯調査)。現在3割の受診者が100%歯科を受診すると460万人で、1医院あたり1日67人、患者数が1日1医院平均20人という現状から考えると3倍の歯科医院が必要になるのです。70%でも2倍必要です。現在未受診の「潜在患者」だけでこの数字です。さらに、日本では成人の8割、7500万人が歯周病に罹患している。6万9千の歯科医院で治療と定期管理を受け持つと、1医院あたり1000人になります。そう考えると「過剰」などと言っている場合ではありません。「歯科市場」は「ブルーオーシャン」です。
要は「いかに歯科を受診していただくか」。工夫して本気でがんばりましょう。