Home > 歯科界へのメッセージ > 国民病・人類病撲滅の最前線<2017.07>
コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。
国民病・人類病撲滅の最前線
8020達成率5割を超えた!
今年の「歯と口の健康週間」を前に、厚生労働省は「平成28年歯科疾患実態調査」を公表しました。これまで6年毎に調査していたものを1年早めた理由は、歯科においてそれほどの大きな変化がおこっていることの証でもあります。
最も注目されたのは「8020」達成者が11%増えて51.2%になったこと。平均も「8016」は堅いと思われます。それは、世界一の長寿国日本を「食べられる口」が支えているからと言っても過言ではないでしょう。「8020運動」をはじめ、歯を守り健康意識の向上に力を尽くしてきた歯科界の努力に拍手を送りたいと思います。
歯周病罹患率にイエローカード
一方で歯周病の罹患率の急増に「目が点」になりました。「35歳以上の成人の約8割が歯周病」と衝撃を広げた前回の表現(歯周ポケット4mm以下も含めた罹患者)にならって言えば、実に9割以上、ほとんどの国民が歯周病に冒されているという数字です。さらに「4mm以上」の増加もすさまじい。15歳から75歳超まですべての世代で5.5%~18.7%、平均で11.6%も増えています。65~74歳では過半数の57.5%が4mm以上という深刻な実態が明らかになりました。歯周病が広く深く、日本人の健康を蝕んでいるのです。
歯周病がアルツハイマーを誘発!?
歯周病の蔓延は単に口の中で硬組織と比べて軟組織が病気がち、という程度の問題ではありません。歯周病が関連する全身疾患が次々に明らかになっています。5月に開催された日本歯周病学会で、日本大学の落合邦康特任教授(口腔細菌学)らの研究チームは歯周病菌が産生する「酪酸」がアルツハイマー病を引き起こす一因になっている可能性があると発表しました。ジンジバリス菌など歯周病の原因菌が作り出す酪酸が血管を通じて脳細胞に入ると、鉄分子(ヘム)や過酸化水素、遊離脂肪酸が過剰に作り出されて細胞に酸化ストレスが加わり破壊されてしまうメカニズムを解明したのです。歯周病患者の歯周ポケットからは健康な人の10~20倍も酪酸が検出されており、それが長期間日常的に脳に運ばれて徐々に脳細胞が破壊されてゆく「サイレントディジーズ」の恐ろしさに背筋が寒くなります。
全国民対象の歯科検診を!!
歯周病はほとんどの日本人が罹患している「国民病」でありギネス登録の「人類病」です。であるなら、人類は地球的規模で「歯周病撲滅」を人類最優先の課題にしなければなりません。
どうすれば撲滅できるのか、それは病気の原因を無くすことです。歯周ポケットのバイオフィルムに棲む原因菌を除去する。そして歯科医院で定期的に管理して悪化、再発を予防することに尽きます。一刻も早く、学校で、企業で、自治体で、全国民を対象に年に1回以上の定期診査とPMTCを実施すべきです。また、最近の疫学調査で、歯周病や歯科検診実施の有無で医療費に大きな差が出ることも明らかになっています。
先ごろ開かれた日本顎咬合学会の公開フォーラムにおいて米山武義先生が「我々は口腔のケアの威力を熱く語れるか!」と題して講演しました。国民病・人類病に立ち向かう最前線にいるのは全国の10万の歯科医師と11万人の歯科衛生士です。まさに「機は熟している」(米山先生)のです。歯科の役割をアツく語り、態勢を整えてアクションを起こすときを迎えています。
COMNETDentalsupport