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2021.11.02

第23回日本顎咬合学会学術大会 歯科開業学セミナー 『行きたくなる歯科医院』の条件 ~16000人患者意識調査にみる「選ばれる歯科医院」像~2 コムネット代表取締役 菊池恩恵

歯科開業学セミナー 『行きたくなる歯科医院』の条件 歯科医院選択の基準はなにか?

HPに寄せられた1万6370人の回答

 さて、こうした現状を前提として、私達は2001年11月と2005年5月の2回、インターネットを使った「いい歯 患者さんアンケート」を行いました。2001年には、1ヵ月あまりの間になんと1万6370人の方から回答が寄せられました。そして今回、この学会にあわせて、1年の間の比較をやってみようということで5月に実施して現在中間集計ではありますけれども770人の回答が返ってきています。それを重ねながら患者さんが考える、感じている「行きたくなる歯科医院」はどういうものかを考えていきたいと思います。  今回のこのアンケートは、(1)国民・患者さんが歯科医院、歯科医療をどう感じているか、(2)これからの医療改革の方向をどう考えているか、そして実際に(3)「行きたくなる歯科医院」とはどのような医院なのか、という3つの点を明らかにすることを目的に行いました。これらをできるだけ具体的にご説明できればと思います。

9割が「不況で通院をがまんしている」

 まず治療費。「現在の歯科の治療費は高いと思いますか」という質問をすると、2001年では65%が「高い」。27.8%が「適当」。あとは「安い」、「わからない」と続きます。今年も66.1%がやっぱり「高い」。24%が「安い」。それから「その他」、「わからない」と続いています。「高い」と感じている人が6割、3分の2に達しているわけですが、それも実感としては理解できますが、それ以上に私は、4分の1以上の人が「安い」と感じ、「適当だ」と感じていることも注目すべきだと思います。
 次に、長びく不況の中であなたはその不況が理由で、つまり「経済的な理由で歯科医院を受診する回数を減らしたり我慢したりしていますか」という問いに対して「はい」が3割でした。「いいえ」が60%。経済が少し上向きになってきたといわれている今年はどうでしょう。なんと89.7%、9割近くが「我慢している」と答えています。
 歯科医療は、医療の中でも景気に左右される傾向が強いということは、総務省の「家計調査」でも表れています。家計費の中で、不況が原因で出費が落ち込むのは、一般の医療費の場合5.5%ですが、歯科の場合は実に倍以上の12.5%にのぼります。私たちのアンケートの数字も、この総務省の調査を裏付けていると思います。

公的健康保険制度を継続し負担を軽く

図1

 次に健康保険のあり方についての質問です。健保に対しては、継続して「患者負担をもっと低くすべきだ」が33%と最も多く、続いて「今の健康保険制度を維持してもらいたい」が27%です。「患者負担が増えるのはやむをえない」7.9%、「公的な健康保険をやめて民間の保険にすればよい」4.9%、「公的部分と自費部分をもっと明確に分ければいい」20%という数字です。
 今年はどうでしょうか。「患者負担をもっと低くすべきだ」が2割以上増えて55.4%に達しています。「保険制度の維持」17%、「患者負担が増えるのはやむをえない」2.9%、「公的健康保険をやめ民間保険に」2.9%、「公的負担部分と自費部分を明確に分ける」16%という結果です。前の問いと連動していますが、回答には経済状態が大きく反映しています。患者負担を減らしてほしいという声がいっそう強まり、切実になっていることを物語っています。(図1)

3割が「かかりつけ」をもたない「浮動票」

 さて、次にかかりつけの医院について。「あなたはかかりつけ歯科医院を決めていますか」に対して3分の2が「はい、決めています」。3分の1は「決めていません」。これは今年の数字です。7割が決めていますが、言い換えれば3分の1は決めかねている「浮動票」ともいえるのです。
 今年のアンケートに「最近歯科医院を変えたことがありますか」という問いを入れてみました。「変えた」が18.6%、「いいえ」約8割、77.7%という数字です。「変えた」ということは、医院の側からみれば「治療中断者」ということになります。

転院の理由トップは「治療がへた」

 問題は「変えた」原因です。転院の理由を聞いてみました。1番大きな理由は転居、地理的な理由や、引っ越しや転勤、歯科医院の閉院や廃業という不可抗力の理由が第1位を占めています。2番目が「治療が下手」。たとえば「耐えられない痛さ」「治療全てを終了したがすぐに虫歯があったことがわかったからもう行かない」という、ドクターの腕への不信、技術的な不満、と同時に「治療が進まない」「治療期間が長い」「レントゲンが多すぎる」という、治療の進め方への不満やトラブルもあります。3番目に多いのが「人」の問題です。「ドクターやスタッフの態度が悪い」「父親の先生はよかったが息子の代に代替してから態度が悪くて二度と行きません」というのがあります。それから直接患者さんへの態度ではないのですが、「治療中にドクターとスタッフが治療と関係のない話をするので対応がよくないのでもう行かないことにした」というところもあります。患者さんに対して不親切で、ドクターやスタッフの「対応が悪い」。それから「治療費が高い」という不満もあります。

横たわるコミュニケーションギャップ

 こうして考えてみると不可抗力の転居や地理的な理由をのぞけば、ドクターやスタッフの対応、治療費が高い、治療時間が長い。それぞれの理由はありますけれども、なぜ治療費がこれだけかかるのか、治療期間が長引くのはどうしてか、それをきちんと説明し、コミュニケーションをはかれば解決できる問題ではないでしょうか。
図2 残念ながら、治療の良し悪しというのは患者にはほとんど理解できないというのが現実です。それなのに「治療が下手」だと、「納得できない」と感じさせてしまうところに大きなコミュニケーションギャップが存在しているのです。

歯科医院選択の基準はなにか?

 さて、それでは患者さんはどんな基準で歯科医院を選んでいるでしょうか。
 2001年と2005年の数字を重ねてみました。1番多いのが「家や職場に近いから」という理由です。それから2番目に「評判をきいて」。3番目に「腕がよいから」。それから「院長の人柄」と続きます。それは2001年も2005年もあまり変化はありませんが、今年になってからは院長の人柄というあたりに大きなウエイトがおかれているというのもわかります。
 ところで、どうして73%と77%、7割以上もの人が、ただ「近いから」というだけの理由で歯科医院を選んでいるのでしょうか。(図2)

8割が「医院選択の情報がたりない」

 その原因は明らかに「情報不足」にあります。事実、「歯科医院を選ぶときの情報は不足していると思いますか」と聞いてみると、2001年では84.6%が「イエス、不足している」と答えています。今年になるとやはり同じく79.6%。つまり8割が選ぶ情報が足りないと感じていることがよくわかります。
 では、「どんな情報があればよいと思いますか」と聞いてみました。多い順にあげてみます。「きちんと説明してくれるかどうかという情報がほしい」「治療費の概要が知りたい」「診療方針や医院の特徴を知りたい」「歯科医師の経歴や人柄を知りたい」。今年もだいたい同じような傾向です。
 「経営の3要素」は人、物、金といわれていますが、歯科医院の経営においてもやっぱり「人」、それから「物」というのは商品、イコール医療サービスの内容、それが商品ですね、そして「お金」に関して、患者さんはとても注目しているということがわかると思います。そういう情報をこれからどんどん開示してほしい、情報がほしいと患者さんは思っているのです。(図3)

図3