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2021.11.02

第23回日本顎咬合学会学術大会 歯科開業学セミナー 『行きたくなる歯科医院』の条件 ~16000人患者意識調査にみる「選ばれる歯科医院」像~4 コムネット代表取締役 菊池恩恵

歯科開業学セミナー 『行きたくなる歯科医院』の条件 「価値組」歯科医院はここが違う

「行きたくなる」4医院の実例から学ぶ

 さて、今まではアンケートに表された患者さんの生の声を通して「行きたくなる歯科医院」のあり方をご一緒に考えてきました。では、実際にどんな医院が行きたくなる歯科医院なのか、なぜ患者さんが集まっているのだろうかということを、コムネットの歯科医院ネットワークの中から具体的に実例でご紹介したいと思います。今回は顎咬合学会の学術大会ですので、本学会の認定医として活躍されている歯科医院のなかから、北から南まで4つの医院を選ばせていただきました。

「むし歯ゼロの街を」目標に 苫小牧・みかみ歯科

 最初は北海道のみかみ歯科・矯正歯科医院です。「苫小牧をむし歯ゼロの町にしたい」という大きな目標をかかげて1991年に開業しました。規模はユニット8台、ドクターは常勤4名非常勤1名、専属の受付も一人います。一日の患者数が約70人で自費率が30%です。自費率の全国平均は20%内外ですが、北海道の場合はほとんどが保険診療で、自費率は2%といわれています。そのような環境の中で、予防とインプラントそして矯正で自費率3割という、きわめて高い割合の歯科医院です。
 院長の三上先生、46歳です。日本歯科大新潟校の非常勤講師も勤められていて、歯周病の講師という専門家でもありますから継続管理も徹底して行っています。ベテランの勤務医、歯科衛生士さんが予防とメンテナンスのシステムを指導しています。雄大な北海道らしく、医院も大きいですが待合室もとても広く、椅子は一人ひとり個人がけの椅子。奥にキッズコーナーがあります。
 この医院の最大の特徴は「苫小牧をむし歯ゼロの町にしたい」という目標をかかげて、真剣に予防に取り組んできたことです。「10年前のあなたのデータがうちの医院には残っています」と、患者さんに胸をはって言えるのです。「か初診」が始まる遥か前から、ほんとうのかかりつけ歯科医院として、位相差顕微鏡を使って患者教育やTBIを行い、PMTCやサリバテストなども行ってきています。
 一番驚いたのが、待合室の壁にびっしり貼られた子どもたちの写真でした。数えてみたら136枚、総て「むし歯ゼロ」を達成している子どもたちです。私がみかみ歯科を訪問したのは去年のことですが、それからもどんどん増えているそうです。
 また、また、苫小牧は王子製紙などアイスホッケーがさかんな町で、院長自身アイスホッケーの選手でもあります。そこで、「スポーツ歯科」の実践として、ホッケーチームのためにオリジナルのかわいいマウスピース、スポーツ用のマウスガードを作ってあげてよろこばれています。技工士さんが大活躍して作っている、カラフルでとても楽しいサービスです。こういう、地元の特色にマッチした「プラスワン」のサービスも患者さんにとても受けているのです。

ISOで歯科医療の品質向上を 東京・さくま歯科

 2つ目の医院を紹介します。2000年に開業した東京・練馬区のさくま歯科医院です。院長の佐久間先生は39歳、ユニット4台の医院です。駅から歩いて5分ほどの住宅街の中にあり、開業当時、半径1キロの間に20軒の歯科医院があって、ある経営コンサルタントに、「ここでは1日10人もこないでしょう」と太鼓判を押されたそうです。
 当然、「他の医院と同じ事をしていては1日10人以下」は目に見えているので、院長以下、スタッフのみなさんは、「他の医院でやっていないこと」を、そして「患者さん満足度をアップ」めざして、3つのことを徹底してやることにしました。
 第1にインフォームド・コンセント、徹底して患者さんに説明することです。第2に病院は清潔が一番、衛生が一番、ということで、徹底した感染予防止と院内の清掃にとりくみました。そして3番目には、患者さん本位の診療体制。仕事が厳しく、多忙でなかなか通院できない患者さんのために、交替制で早朝診療と休日診療を実行してきました。その努力は確実に成果を生み、コンサルタント氏の予想を大きく覆す安定経営を実現したのです。
 そして開院3年後に、医院作りの決定版として、ISOの9001を認証取得しました。院内の討議を経て掲げた「品質方針」は「最新で最適の歯科医療技術を提供し、最良の接患者マナーをもってつねに患者様が安心満足できる歯科医院を目指します」。そして「品質目標」は「いつも笑顔をたやさず、仕事確認の声やしっかりしたあいさつをし、院内の雰囲気向上のために努力しましょう」という内容です。方針、目標とともに、Plan-Do-Seeのチェック体制ももちろんしっかりシステム化されています。
 さくま歯科の大きな特徴は「勉強熱心」だということです。私が訪ねた日にはスタッフの口腔内カメラの勉強会をやっていました。もうひとつの特徴は院内のコミュニケーションがすばらしいことです。院内を回っているノートが非常な優れもので、「ミーティングノート」に「診療室申し送りノート」。開くと、器具の取り扱い方、トラブルへの対応、システム変更、等の院内の情報を共有する。共有しつつ意見を書いてそれで確認し、意思統一をはかる大きな力になっています。これはみなさん方に是非まねしていただければと思います。
 こうした数々の努力が実を結んで、現在では磐石の歯科医院経営を誇っています。

「ブランド化戦略」で抜き出る 熊本・パール歯科

 さて、3番目にご紹介するのは、九州は熊本市の健軍で開院しているパール歯科・矯正歯科クリニックです。建軍で一番、熊本で一番という目標をかかげ、「ブランド化戦略」で県内随一の激戦区を勝ち抜いている歯科医院です。
 1995年の開業、院長の前田先生は45歳、ユニット7台、規模はドクター6名、歯科衛生士12名、受付2名、特徴的なのは保育士と看護士がいる歯科医院ということです。
 さてどんな医院でしょうか。健軍行きの路面電車の終着駅、その電停に近いところにパール歯科・矯正歯科クリニックがあります。「美」をテーマに統一した空間づくりを行い、建物や内装はもとより、デザイナーズブランドのドクターやスタッフのスタイルも、とてもおしゃれです。入ってまずびっくりしたのが、この受付でした。まさにホテルかカフェといった感じの入り口です。天井は吹き抜け、窓に沿ってカウンターがあり、そこでゆっくり外を眺めることもできます。そこでコーヒーをのんだらおいしいだろうと思っていると、コーヒーの香りがただよってくる。そうです、本当にコーヒーのサーバーがおいてあり、おいしい水も飲める待合室です。
 そして、2階にあがると保育室があります。専門の保育士が2名常駐して子ども達の世話をしています。遊具も揃っていて、本格的な保育園を見ているようです。
 診療室は、スタッフの動線と患者さんの動線が分けられていてスタッフは内側を動きます。患者さんは窓際の廊下を通るようになっています。子どもたちも泣かないで楽しく診療を受けています。
 院長先生の診療風景です。パール歯科は、診療方針に「質の高い治療」「誠心誠意の治療」「最良最新の治療」をかかげて、患者さんのどのような希望にも対応できる歯科医院をめざしています。診療には技工士も同席して、保綴物の制作の時に一緒に確認するシステムを採用してます。
 スタッフは、患者さんがお帰りになるときには「お疲れ様でした」と声をかけます。完全に「お客様」に対する態度です。接客、応対のすみずみにまで気持ちよく診療を受けていただきたいという姿勢があふれています。医療サービス、診療体制、接客、総てにおいて一歩先を行く歯科医院といえるでょう。
 合言葉は「自分達が行きたい歯科医院」をめざすということ。それは、今回紹介するすべての医院に共通する、「患者さん本位」の姿勢と重なっています。